働きすぎが問題だと認識されていないことが、逆に問題 ー田中俊之

田中 男爵には娘さんがいらっしゃいますが、将来こういうことが心配だ、と思っていることはありますか?

山田 この夏で4歳になりました。つつがなく生きてくれればいいとなと思っていますよ。あまり「何者かになれ」みたいなことは、シルクハット被ったおっさんが、よう言わんでしょう(笑)。

田中 社会学的な話をさせていただくと、結婚するときに、男の子ははあまり気にしないのですが、娘さんの方は、ご両親が相手の条件を結構気にされる。つまり、「俺たちが許可しない相手とは結婚しては駄目だぞ」ということがあるみたいですね。
息子だったら、「うちの子と結婚してくれるんですか、ありがとう」みたいなことで済むわけですが、娘さんだとハードルになるようなことがあるみたいです。

山田 女の子の方から「息子さんをください」などと言うことはない、確かに。

田中 連れてくるお相手はこんなだったらいいなとか、嫌だなとかありますか?

山田 経済力がある方がいいですね、親としては。

田中 それは実際に調査でも同じで、やはり仕事や収入がちゃんとしていない人は嫌だ、と親は思っているわけなんです。

山田 でも、自分んとこって考えたら、そうなるんちゃいますか。

田中 日本では男女の賃金格差がものすごく大きいという現実があります。
だから、親が相手の男性の経済力を気にしてしまうという構造があるわけですね

山田 そうか、そもそも男と女が、同じように同じだけ稼げる世の中であれば、こういう考え自体が生まれないということだ。

田中 そうです。「うちの娘は稼げるんだから」となれば、親御さんは、男性の経済力や肩書きをあまり気にしないのではないか、ということです。
逆にいうと、男は仕事やお金でしか評価されないというのがツライ部分だと思うんです。男性の場合、働き過ぎは社会問題だといわれていますが、実は、仕事がないときの方が不安になるのではないですか、自分も家族も。

山田 バリバリ働いているのがかっこええという、若干マッチョな考え方がやはりありますからね。

田中 ありますし、それは別に男性だけが持っているわけではない。
男爵もすごく忙しかったときがあったと思うのですが、そのときの方が、家族も男爵自身も、「いま、頑張っている!」という気がしてしまいますよね。

山田 それはありますね。
20何時間テレビのようなものがあると、苦痛ですね。「わぁ、俺は今日、24時間ヒマやな」と、呼ばれていませんから(笑)。そういう考え方が刷り込まれているというのも変ですが。

田中 そっちですか(笑)。24時間なんて、出るのは大変ではないかなと思いますが、出ている方がお笑い芸人としては気は楽ですね。
今、日本は、製造業や建設業などの昔強かった分野が弱くなっているし、全産業で男性のお給料は既に下がっているので、「男は仕事、女は家庭」ではなく、「男も女も、仕事も家庭も」となっていかなければ生活が成り立ちません。しかし、「バリバリ働く男こそが男」だという発想はいまだに根強く残っています。
この間、専業主婦が集まる平日昼間の市民講座で、夫のいいところを挙げてくださいというワークショップをしたら、「馬車馬のように働くところ」と言う人がいました。それが、1人、2人ではないんです。
もちろん辞書では「馬車馬」は一生懸命なことの例えなんですが、本来は、馬車を引く馬という意味ですよ。褒めているつもりなんでしょうけれど、男性の立場からすると、人だよね…と(笑)、ツライな…という気持ちがあります。
働けば働くほど褒められるので、働き過ぎて止まらない。逆に、男性の場合、一番不審がられるのが無職ですよね。パートや非正規でも少し下に見られてしまうわけです。
だから、「働きすぎが問題だ」ということが認識されていないことが、逆に問題ではないかと思うんですね。

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一緒の方向を向いて悪口が言えるというのは、非常に大事やと思うんです。そういう人間が絶対必要ですよ