〈後編 “自分を開く”場づくりの仕組み〉

「芝の家らしさ」は、どのようにしてつくられるのか。芝の家の雰囲気づくりに欠かせない「ミーティング」を坂倉さんがご紹介します。


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お当番同士の関係が、来る方に影響を与え場の雰囲気を作っていく

坂倉 芝の家の雰囲気は、実は、そこに関わっている方々皆で作り合っているんです。

その日の最初の方が訪れる以前の時間帯、芝の家には既に2~3人のお当番が来ています。実はそれがすごく大切で、来た方は、お当番の居方とか関わり方に影響を受けるんですね。

皆さんも、ガラッと入った瞬間に、「あ、やばい雰囲気だ」と感じることってあると思うんです。「おはようございます」とも言わない会社とか、何かすごく揉めている、ぎすぎすしている人たちがいるって、何か入った瞬間にわかりませんか。「あ、ここは何か下手なことを言ったら、まずいことになる。油断できない」と、直感的に感じることがあると思うんですね。

けれども、逆に入った瞬間に、その空間にいる人たちがちゃんとお互いのことを気遣っているとわかることがあります。べてるの家(精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点/http://bethel-net.jp)の理念に「弱さの情報公開」という言葉があります。これに似ていて、芝の家では、その日一緒に過ごすお当番同士で、自分の弱みも含めて共有します。「いや、ちょっと昨日飲み過ぎちゃって、今日は体調が悪いんだよね」「無理しないでね。大丈夫だよ」という関係をちゃんと作っていると、その空間に入ってきた人はわかるんですよ、本能的に。何かここは他と違って、「ちょっと自分の本音を言ってもいいかな」とか、「自分がいたいようにいても怒られないな」ということを感じてくださるのではないかと思うんですね。

お当番同士の関係が来た方にも影響を与え、来た方は自分の居方と体の雰囲気を変えて、場ができてくる。すると、後から来る人は「ここはこういうことろかな」と、自然にその場に馴染んでいく。1人、2人、3人と来る間にだんだんとそれができていき、1日の終わりにはけっこう芝の家らしい雰囲気になっているんです。

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何が起こるかわからないことを楽しみ、それに付き添う