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〈前編 ー “自分を開く”場づくりの仕組み〉
3回目のシリーズ 著者に聞く!は、『つながるカフェ』の著者 山納 洋さんと地域コミュニティの拠点「芝の家」の坂倉杏介さんに、「どのようにして場は立ち上がるのか〜地域とつながる場を生み出す」についてお聞きしました。
坂倉さんは、「「コミュニティカフェをやりたい」という人は増えていて、実際に場も増えているのだけれど、本当にそこに来た方がつながれるような仕組みをちゃんと意識している人は、実は、まだまだ少ないんじゃないか」と言います。
どうして芝の家はこんなにも居心地がいいのか。その秘密をご紹介します。



場はできたが、カフェを運営するノウハウが追いついていない

山納 洋:「場づくり」と言うと、自分でコミュニティカフェを作り、そこに居て「皆さん、どうぞお越しください」と呼びかけるようなことをイメージするかもしれませんが、僕は、もう一つ、自分がいろいろなことを受けとめる度量を持って、外に出かけていくことを意識する、ということがあるのではないかと思います。

例えば、今よく話題になる「こども食堂」も、貧困で困っている子どもたちがご飯を食べられる場所を作ろうと構えるのですが、本当に問題を抱え大変な状況にある子どもたちは、実は、なかなかそこに足を運ぶことができない。

どうやって本当に支えが必要な人と出会うのか、ということを場づくりでは考える必要があると思い、この『つながるカフェ』でも、いくつか参考にしたい事例を挙げました。

「場」には、自分たちがおもしろがって何者かになりたくてつくる場と、この社会の中で放っておくとこぼれていってしまいそうな立場にいる誰かのための場があり、これら2つのつくり方は随分違っています。そのことを、僕は強く意識しています。

そして、自分自身もTalk’ Aboutを通して、「創発」というものがどうしたら起きるのか、ということをかなり意識して活動をしています。

坂倉杏介:私もこの本にすごく共感しました。この本の大きな問題意識の一つだと思うのですが、「コミュニティカフェが必要だ」とか「コミュニティカフェをやりたい」という人は増えていて、実際に場も増えているのだけれど、本当にそこに来た方がつながれるような仕組みをちゃんと意識している人は、実は、まだまだ少ないんじゃないかと思います。

山納:それは本当で、場はできあがったけれど、コミュニティカフェを運営していくノウハウや理念が追いついていないとすごく感じています。

僕は、実際に関東でもコミュニティカフェと言われているところを何軒も回りました。あるコミュニティカフェでは、僕1人しかいないシチュエーションで注文したコーヒーが出てきたときに「コーヒーのお客様」と呼ばれました。「(コーヒーのお客様か…)はい」と言って受け取ると、その後、そのお店の人と特にしゃべる感じにもならなかった。

また、高齢者が1人で食事をするのはしんどいので、皆でごはんが食べられる場所を作ろうというコンセプトでできたコミュニティレストランに行きました。そこで、おじいさんが1人でごはんを食べていました。別に2人のお客さんがいて、近くで打ち合せをしていました。打ち合せが終わって1人が帰った後、このおじいさんが残ったもう1人に話しかけました。そうしたら、その人がギョッとして、おじいさんとは話もしないで仕事をし続けて、おじいさんがとてもかわいそうな感じだったんですね。

お店の人は、このおじいさんのことに全く気付いていない。なぜなら、カフェとキッチンスペースが別部屋になっているので、全く見えていないという空間上の問題がありました。これは、コンセプトを体現する運営や空間になっていないということなんだと思いました。

こうしたカフェを2軒立て続けに見て、最後のアポイントが「芝の家」だったんです。ここもつまらなかったらもう帰ろうと思って入ったら、ここは絶対何か違うぞと思ったんです。スタッフの方が部屋の奥におられたんですが、僕に話しかけてきたのは、スタッフじゃないんですね。お隣にいた、たぶん常連のお客さんだと思います。「昨日こんなことあったんですよ」といった感じで普通に話しかけてきてくださった。それで別の人が部屋に入ってきたら、また普通に話しかけてくださって、「ん? さっきまで見ていた2軒とここは何が違うんだ」と思い、それから坂倉さんに連絡をとらせていただきました。
今日は改めて、その秘密をお話しいただきたいと思います。

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立場の違う人たちが同じ空間に無理なくいるから、自然な出会いがある