人はなぜ他人のためにお金をだすのか –4つの満足感

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佐々木:
さて、私は、行動経済学という分野で、人はなぜ他人のためにお金をだすのかについて研究しています。
簡単に話をすると、行動経済学では、寄付、今回の場合は支援ですけれど、寄付することで得られる満足感と、寄付をするときにかかってしまうコストを比較して、満足感が多いときに寄付をするという考え方をします。

では、満足感とは何か。
満足感には4種類あります。一つは、「純粋な利他性」で、寄付することで相手の状態が良くなることが嬉しいと感じることです。
もう一つは、「暖かな光」で、他人の喜びではなく自分が寄付しているということ自体に喜びを感じるというものです。
このタイプの人は、相手の状態が良くなっても支援し続けますが、純粋な利他性の人は、相手が良くなった時点で喜びの上昇が終わり、寄付をやめてしまう。自分以外の人が十分に寄付をしていてもやめてしまう傾向があります。
さらに、「互恵性」は、以前誰かに寄付してもらったのでお返しにする、将来自分が困窮したときに寄付してもらうかもしれないからする、というものです。
最後は、「同調性」で、周りの人が寄付をしていると寄付先の信頼が高いように感じる、また、寄付すべきだという社会的規範から外れるのが嫌なので寄付をする、というものです。

こうした4つのモチベーションは、これまで寄付をしたことがある方やファンドレイジングを手がけたことのある方はご存じでしょう。
欧米の研究結果から、暖かな光、互恵性、同調性を動機とする寄付が多く、寄付を集めるには、それぞれのモチベーションに沿ったメッセージを送ることが大切だとわかっています。
クラウドファンディングは、リターン、つまり、お返しがあるということで、互恵性の部分を推し出しているのが一つの特徴です。
ちょっと面白い研究例を紹介すると、リターンがある場合とない場合では、リターンがある方が寄付率は高くなるんですが、寄付をしてくれた人の平均金額は、リターンがない方が高いんです。リターンの提供で、トータルで集まる金額まで高まるとは必ずしも言えない。つまり、互恵性を推し出すだけではダメだということです。
クラウドファンディング・サイトの運営者はそれをよくわかっていて、リターンだけではない要素や機能をウェブサイトにたくさん盛り込んでいます。
一つは写真であり、誰を助けるのかを明示することで「純粋利他性」や「暖かな光」を刺激して、コメント欄を設けることで「同調性」を強調しながら、平均金額を下げない仕組みになっているんだと思います。